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読書趣味の長い歴史

いまだに読書好きです。何か活字を読んでないと、読まないと落ち着かない。
小学校の低学年の頃から読書が苦にならなかった。何故そうなったか、なれたのかは、判らない。ともかく
本を読む…と言う事が好きだったのです。
最初は動物とか、昆虫に関するものだったかなー。魚とか、自然博物ものが好きだった…よーなのです。
「歴史好き」と言うのもこの頃からで、冒険小説でも「歴史の謎」がからむものが当時から無類に好きだった。
途中までしか読めなかったのでこころ残りなのに「室町時代の古文書に北極らしい事がかいてある」「それを現代の人が古文書を読み解きながら…」「何か謎の楽園に到達したらしい」っていうのに夢中になってました。なぜこころ残りかと言うと、その本は知り合いの家でたまたまあったから読んだのですが、後ろ半分が破れて、無くなってると、つまりボロボロの本だったのです。
新しい事が判る、知る…と言う愉しさがあった…からなのかなー。
小学性の頃、我が家の物置にオジさんが小学生とか、中学生の時に読んでいた「講談本」と言うものがあった
昔の寄席で演っていた講談の速記をもとにして立川文庫から出ていた布張り装丁の分厚いものだった。これが
確か12、3冊あったのです。他愛無い時代物。真田十勇士・笹野権三郎・赤穂義士・猿飛佐助・由井正雪…など。
全てが時代もの。清水の次郎長ものとかね。あー、曲垣平九郎なんて馬術の名人、知らないでしょ。これで妙に時代ものに詳しくなってしまいました。
さらに落語も好きだったから江戸風俗とかね、吉原とか、小唄とか子どものくせに知ってるというヘンな事になってました。
本を読む…と言う点だけは早熟だったのですね。金園舎から出ていた落語速記本なんてものも読んだ。
凄く分厚いものでねー。いまのイミダスくらいのもの。ほとんどの落語の口述筆記。
間違って買ってしまった渡辺なにがしの大人向けの冗談話も意味が分かった。だって書名がね、「私の冗談事典」だったんだもの。面白いものかと思って買ったら、大人の艶笑ジョーク。エッチな内容もなぜか冷静に理解してた。そのくせ、現実のたとえばヌード写真とかにはあまり興味が無かった。文字で書いてあると好奇心が起きたのです。中学生でも、高校一年性くらいでもこの傾向は余変わらなかった。
小説はけっこうおませにほとんどのものは読んでいて、性愛描写も読んでた。
でも、現実の、ガールフレンドとのつきあいの中で、その種の連想とか、欲求はほとんど起きなかったのです。
具体的に思いつかなかった。
このあたり、自分でも不思議なんですね。高校2年生くらいから女の子と不埒な発想が少し結び着いて来たのです。

「歴史の謎好き」って事では中学生の時読んだ「万葉集の謎」って古代の日本語のルーツを論じたものに夢中になった事もあります。ヒマラヤのブータンと言う国の一部、レプチャ族の「レプチャ語」とか古い「原マレー語」が日本語のルーツと言う内容。学会では滅茶苦茶に攻撃されたものだけど、後年の「ドラビダ語ルーツ説」のはしりみたいなものでした。いまだに言語学的なもの、言語のルーツに関する本は良く読みます。
同じ中学1年生の時読んだ、「高木彬光・著」「成吉思汗の秘密」と言う義経=成吉思汗同一人物説も面白かった。
まー、今回は本好きなんです…と言う、それだけでした。
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植木等こまわり君

僕たちの…というより僕自身が強烈に思想的に、センスとして影響を本気で受けたのが植木 等の一連の「無責任
シリーズ」やテレビでのギャグセンス。
そして、コント55号の主として萩本欽一が発する病的なまでのギャグ、人間性の追求がこれを強化するのですね。
これは、さらに後年のビートたけしの強烈な反社会ギャグを生み出す下地を形成したとも言えるのです。
そして、20代も後半、いい年してガガーンと影響をうけたのがアナーキーなまでの破壊的ギャグ「こまわり君」です。異常にほっぺたの膨らんだエロい小学生で、何故かおまわりさんの帽子をかぶっている「こまわり君」
そのすさまじいギャグを文字では再現できませんが、実に僕は本気でこのギャグセンスにいかれてしまいました。
で、植木 等の「人生で大事なものは、タイミングに、C調に、無責任性格」の一部が出来上がったのです。
こうした「冗談を現実にやって生きて行く」と言う呪わしい性格が、しっかり僕の中に植え付けられた…と。

これと正反対に北杜夫の純文学・三島由紀夫の極限のファンタジーなどによって影響されたリリカルな、叙情的な側面もあるものだから、人格が分裂・分断的にもなるのです。
なんだか、ここまで。またね。

マニアックな漫画の想い出

僕がいまでも大好きな「漫画」。僕らの世代は「電車の中でも、人前でも漫画なんてものを読む世代」と最初に週刊誌で写真入りで報道されたのです。
いろいろあるけど、僕だけのマニアックなものを少し、誰にも解らないだろうけど買い手みよーっと。
「虎の子兵曹長」わち・さんぺいと言うギャグ漫画、ほのぼの系漫画の作者、もと陸軍航空隊整備士し言う経歴から描いた「戦争漫画」ですけど、細い描線で描かれる陸軍一式戦闘機・隼が実に美しかった。主人公は空戦で死ぬのですが、戦後の日本でタクシーの運転士になっている同僚と隊長が偶然出会うと…と言うラストシーンが子どもにも印象的でした。
「さいころコロ助」これは実に奇妙なレアな漫画。覚えてる人も少ない名作。益子かつみと言う作者でした。この作者は「ドラえもん」などの系統のルーツとなる「怪球Xあらわる」と 言う作品でしられています。
織田信長の戦国時代が舞台。何故か身体がさいころと言う「さいころコロ助」とか「トランプ小僧」とか不思議な少年主人公たちが侍に入り交じって活躍すると言う…。まー、当時でも珍しいタイプの漫画でした。
野球漫画の元祖のような関谷ひさしと言う人の野球漫画も不思議だつた。あらゆる球種をなげる少年投手。実はこどもの死を悼んで博士が作ったロボットだったという。この人は実に絵がうまかった。のちに「ハリスの風」とか足立充なんかの漫画の元祖とも言える「ストップ兄ちゃん」なる名作を書きます。
巨匠と言われる手塚治虫さん。僕はこの方と実際にお話した事があるのが密かな自慢ですけど。この方の名作、
ヒット作品はおおいのですが「0マン」が好きでしたね。ヒマラヤの奥地で独自にリスから進化した「もうひとつの人類」と言うアイデアが僕の好みでした。
古いものでは「ロボット三等兵」と言うロボット・ギャグ漫画です。
戦中派世代の前谷惟光と言う作者です。戦前の古い映画アボットとコステロなんてとてもマニアックなキャラクターも描いていました。滑稽で、ほのぼのしたギャグなのに戦争批判を含めた不思議な魅力のある漫画でしたね。
うしお・そうじと言う漫画家も誰も覚えていないでしょう。
「どんぐり天狗」「朱房の小天狗」など時代物を描いてました。
まじめな考えから人気の絶頂で漫画家をやめた「寺田ヒロオ」も忘れられません。
「スポーツマン金太郎」「モーレツ先生」「背番号0」など「健やか漫画」が懐かしい。
まー、こんな所が子どもの頃の子どもらしい漫画でした。

団塊の世代の過ぎ来し方は

団塊の世代点…と言う言葉は堺屋太一氏の小説から始まった。「団塊」ひとかたまりで数がたくさんいる…世代。
第一次ベビーブーマー世代とも云います。戦争が終わって、平和になって、戦地から夫や恋人が帰って来た。
國はまさに滅びなんとしている…人の本能として仲間の数が激減すれば出産率が上がる。これは世界的にもそうなのです。勝とうが、負けようが、第二次世界大戦ではなにしろ沢山の人々が戦場で、あるいは戦闘地で、爆撃で、
アウシュビッツのような虐殺で亡くなったのです。
まー、そんなわけで「団塊の世代」ってものが誕生した。ほぼ昭和21年から24年、あるいは25年とかにの4年間に生まれたのがその中心的な世代でしょうか。
この世代は昭和20年代末のいろいろな社会の様子を覚えている世代です。日本中が貧しかった頃の記憶です。
地方の小さな町だと車の数も少なくて、仕事にはオート三輪が活躍していた。「運搬車」と呼ばれた妙にごっつい頑丈な自転車とリヤカーが大都市でも活躍していたのですね。
鉄腕アトムの誕生も知っている。鉄人28号にワクワクした。いやそれ以前にラジオドラマで「紅孔雀」「笛吹き童子」ななんかに夢中になった。映画化されたのにも群がってみたな。「赤胴鈴之助」とかも漫画から実写映画。
子ども向けヒーローはほかに「鞍馬天狗」「怪傑黒頭巾」「月光仮面」何故か正義の味方はみんな顔を隠していた。「七色仮面」「宇宙王子」「海底人ハヤブサ」「まぼろし探偵」きりがないくらいあるのです。
町にテレビが増えて行く様子を体験したのです。「矢車剣之助」なんて誰か覚えてるだろうか。
あとねー「怪傑ハリマオ」主題歌が三橋美智也と言うのがおかしいけど。漫画にしたシミ、二本漫画の進化と発展にとことん付き合った世代でもある。小学校3年生か4年生の時に「少年サンデー」と「少年マガジン」が創刊された。忘れられないのは江戸川乱歩の「怪人二十面相」と「明智小五郎と少年探偵団」ですね。これも映画化された。後年、テレビアニメで有名になる「ジャングル大帝」なんて最初「貸本屋さん」だけで単行本で出てた。
まぁ、そんなふうに漫画とヒーローに夢中になってたのが小学生時代。
他に僕の愛読していたものは「よたろうくん」「わんぱくター坊」「虎の子兵曹長」「さいころコロ助」「シルバークロス」そして貴重な天才・時代に早すぎた奇才「杉浦 茂」の「猿飛佐助」とか「孫悟空」シュールなキャラクターギャグ漫画でした。
アメリカのコミックス描画そのままだった「ビリー・パック」「砂漠の魔王」も印象的でしたねー。
そしてなによりも深く影響を受けたのが「貸本漫画」ですね。
小島剛夕・さいとうたかお・水木しげる・つげ義晴なんてみんなこの貸本から誕生した。白戸三平もそうです。
最近映画化された「カムイ外伝」のもとの「カムイ伝」とか「影丸」も貸本時代からのもの。
絶対親が認めない、いや当時は社会的にも「俗悪」といわれたのが「佐藤まさあき」の「拳銃アクションもの」でしたね。でも、やや左翼がかった妙に情熱的な筆致に僕たちは魅せられた。この漫画で拳銃に詳しくなったやつはたくさんいたのです。
「墓場の鬼太郎」なんて紙芝居で見て、貸本で見て、大人になってアニメで見ている。もう書いてるとほんとに霧がないなー。まだ書き足りないけど。また今度ね。えっ、もういいよ…って。
いやーーー、書くぞ。

ブログの方向がぁ…

この所ブログを書くと言うと「霧笛が俺を呼んでいる」の続を書く事ばかり。
誰が読んでるってほどのものでもないだろーし、読んだとしても…ねぇ…とんでもない
「インチキ・アクション小説もどき」だもんなぁ。
折から台風のニュースがひきもきらず次々と大変な被害の様子が伝えられています。
大雨や風邪が強いとか、濡れちゃって…なんて文句もいえないですね。
「名声」
名古屋では100万人の避難師事・勧告とかでどえりゃー騒ぎだなも、めちゃんこ雨が降ったでよー、
川が氾濫してまって市街地までみずびたしだぎゃぁ。
避難しとらす人も多いんだわ。どえどえりゃどえりゃーどえりゃー、どえりゃー、こんだ。
「熊本」
わしゃぁ、こまんか時に熊本におったばってん、そら、台風はひどかったとよ。雨戸をなぁ、
釘で打ち付けたもんたい。そぎゃんせんば、雨戸が吹っ飛びよっとたい。
「福井」
福井県に引っ越したんにぇけどぉ、なーんも台風では騒がんのや。雨戸もねぇでぇ。ちよっこし
いつもよりぃ、ようけ雨と風はあるんにゃけど、熊本んてな、事はないんにゃし。
「東京」
だからさ、場所によって台風の影響もとっても違うんだよね。ただ、首都・東京の交通機関は大雨と
雪なんかにはてんで弱いんだ。赤坂と虎ノ門の間の溜め池なんて「溜め池」ってくらいで江戸時代は
ほんとに池だった。六本木からも下りになってて、すぐ見ずにつかるんだよー。
まず、大変だよね。今年は津波以来、水・雨の災害が多いね。「水難の年」だね。
なんて事で、たまには違う事を書いてみましたーー。

霧笛が俺を呼んでいる…第14回

俺たちの船は函館港を午前1時に出た。相手の船とは海峡のほぼ真ん中で出会う予定だ。相手の船籍は中国、機関に不具合を起こして、緊急の整備会社とスタッフが沖合で合流し、修理を行うと言う筋書きが海保にも届けが廻されている。闇の中に船影が見えた。信号燈の合図が交わされ、船は間近に接近した。
海峡の潮流との具合を調整するためエンジンは動き続けている。
小型ランチが降ろされ、岩船とカーク高階、コルトのジョーそして俺たちが相手の船に移った。甲板には10人ほどの男たちが待っていた中からやけに頬のそげた感じの男ともう二人が近づいて来た。「ボス、予定通り、お客さんと帰ってきましたよ」
その頬のそげたお男が鋭い目つきのまま岩船にそう言った。
岩船は目元に笑みを浮かべている。「城戸、苦労させたな。お前たちも良くやってくれた」城戸の後ろのふたりもほっとしたような表情だ。
城戸が俺たちを見た。見知らぬ顔ぶれに警戒している。カーク高階が少し前に出た。
「新顔は久我と、藤村だ。ロシアへも行く。ボスが決めたスタッフだ。腕は…相当なものだと言っておこう」
「城戸、上手くやってくれ。フョードロフとの合意が成立するまでは、誰がかけても俺が困る」
岩船が静かにそう言った。
城戸はジョーをちらりと見た。
「ジョー、俺はもうひとつお前ぇを信用していない。ボスと組織に妙な真似をしたら切り刻んでしまうぜ」
「へへッ…俺はボスには忠実な、優秀な部下さ。俺が気に入らないなら、いつでも勝負してやるぜ」
城戸は無表情だ。ジョーを少し見つめると、俺たちに視線を映した。
「城戸だ。ボスが決めたならそれでい良い。ボス、洪連金さんと宗文明さんです」城戸が下がる。
がっしりした体型、たいした貫禄だ。こいつが洪連金。もうひとりは中背の縁なし眼鏡、小太りの男が宗文明。
洪と宗はいやに陽性の笑顔で岩船と抱き合った、中国式の挨拶なのだろう。
洪は俺たちへも笑顔を向けた。渋い好みのダブルのスーツだ。「流石に岩船さん、頼もしそうなスタッフですね」驚くほど慣れた日本語だ。宗は気取った感じで俺たちを眺めまわした。こっちは派手な雰囲気だ。
「そう、頼もしい。それだけ油断もならない方々。フフッフフ。ヨロシク、オネガイシマス…」
こいつはまるで戯画化された中国人そのままのアクセントで喋るのだ。スゥェードの革手袋を嵌めたままというのも変わっている。見た目は宗の方がおとなしいくらいだが、目元の冷たさは冷酷な本性を表している。
ひとしきり船室で書類の確認や積み荷の確認が行われた。
帰りは洪たちの一行も俺たちの船に乗り港へと引き返した。
俺たちが話している間に必要な荷物の積み替えも終わっていた。
これだけの作業の間に船は海峡を移動している。帰りの方が時間がかかった。
俺と藤村はことさら静かに従順なスタッフとしてのふるまいに終止した。すべては街に帰ってからだ。
岩船はもちろん見ぬいたいたようだが、相手の船では常に三方向からライフルが狙いを付けていた。
だから、ジョーと俺たちは常にその方向に身体を向けていた。
さりげない、何事もないような、そんな俺たちの動きを城戸も判ったようだ。
帰りの船はそれぞれの思惑を潜めたまま、静かな航海だった。薄明の中に薄れた街の灯りが幻のように浮かんでいた。

と…いよいよ物語はクライマックスへと…行くんだろーな。
なんたってねー、その時の出来心で書いてるからなー。お楽しみに。

配役のご紹介「霧笛が俺をよんでいる」

ここで配役をあきらかにしてみたい。

久我草介…赤木圭一郎  藤村泰三…小林 旭  コルトのジョー…宍戸錠  岩船…芦田伸介  
繭子…芦川いずみ カーク高階…高階 格  城戸…内田良平  刑事・浅部…金子信夫 
カメラバッグの女・桜子…清水まゆみ  函館街角商會・所長テディ…長門裕之
マダム細川…細川ちか子 ママ・香月美奈子…南田洋子  踊り子…白木マリ  深江 彰…深江 章喜
中国マフィア2人…阿部 徹・二本柳 寛

これ以外、大阪四郎・小池朝雄・二谷英明・草薙幸次郎・藤達也…なんて出したいなー。
まー、次回作「口笛が聴こえる港街」もあるから少しずつね。
日活映画を知らない人にはイメージ浮かばないだろな…。

霧笛が俺を呼んでいる…第13回

ジョーが誘うので射撃場に来た。藤村も一緒だ。ここでは20m先の的を撃つ。最初の8発で微妙な銃のクセは飲み込んだ。的は60cmの正方形、ほぼ中心近くに撃ち込むまで、それほど時間はかからなかった。
藤村は短銃身の拳銃のわりに的から外す事はない。
ジョーはさすがにスピーディーな拳銃さばきでマガジンひとつ撃つのに驚くほどの早さだ。ホルスターから抜き、スムーズな動作で身体と腕、銃口が一体となって目標に向く。マガジンを撃ち終わった瞬間ラッチを押してマガジンを棄てる、左手で次のマガジンを叩き込む…ながれるような動きだ、それを最小限の動作で行い身体がぶれない。
おひとくぎりつけた時、ジョーが俺を見た。ニヤッと笑っている。
俺は近づき、ジョーにだけ聴こえる声で「ジョー…暗黒街で自己流に覚えた動きじゃないな。お前の拳銃捌きは正式な訓練を受けた者の扱い方だな。どこで覚えたもんだか…」
「へへン…達人が到達するレベルってな、そんなに変わりはないって事さ」
これは藤村も同じだ、隠れて密かに自己流で身に付けたものではない。
「まったく…、お前らは妙だよ。俺だけがジャングルの自己流ってわけか」
「インャ…久我、お前も大したもんだ。リヴォルバーであれだけ早く全弾を撃つってのはな。しかも弾の詰め替えが恐ろしく早いな」
「ペルーの連中は弾だけはとんでもない量をバラまいて来たからな。早くしないとヤバかっただけだ」
俺たちが引き上げる時、カーク高階が現れた。H&Kのグロッグを使っている。
俺たちの背中に語りかけて来た。
「船と一緒に城戸が戻って来る。お前たちとは合わないタイプだ。気をつけろよ。あいつは気に障っただけで殺そうとするぜ」
「ほー、そんなに短気なのか…」
高階は的に向かいながら背中越しに笑いを含んだ声で言った。
「いや。単なるサディストだ」
「おやおや、相当に嬉しいヤツらしいな」
ジョーがぶすっとした表情だ。よほど城戸が嫌いらしい。
戸外に出ると、なんとなく函館酒場に向かった。もう黄昏が近い時間だ。
カウンターには例によって深江がグラスを磨いていた。
「いらっしゃいませ」
驚いた事に隅っこに客がひとり。珈琲をのんでいる。小柄なカワウソみたいな男だ。
ジョーが声をかけた。「テディ、ここにはあんたが好きな幻想のかけらもないぜ。港の路地でも散歩してなよ」
テディと呼ばれた男は席を立ちながら眼だけで笑った。カウンターで深江に珈琲代を払う。
「ジョーさん、硝煙の匂いをさせたまま舗道を歩くのはまずいんじゃない…強い酒を飲んだ方がいい」
そういいながら外へと出て言った。
藤村がいぶかしそうな視線で見送りながらジョーに聞いた。「見た顔だな。いつもヒマそうに散歩してるやつだ」
「あー。函館街角商會ってとこの所長だ。まー、傍観者、観察者ってとこか。気にする事はない。人畜無害だ。
雇ってるカメラマン、いやカメラウーマンかそいつが有能だから、事務所がなんとかもってる。港に飛んでる極楽トンボだな」
カメラバッグの女が以外に近くにいた。
船が着くまで、もう半月しかない。

と、ここまで。

霧笛が俺を呼んでいる…第12回

歌声喫茶・蓮の店内は静かなものだ。グループ客が変えると、他の客をウエイトレスにまかせて、ママが俺たちのボックスに来た。
「おふたりお揃いで、シャンソンでもお歌いになりたいのかしら、それとも懐かしいレコードが聞きたいのかしら」
婉然とした笑みと言うのがこう言うものなのだろう。年齢の判りにくい容貌だ。大きな瞳、豊かな髪、白すぎるほどの皮膚。ハーフだと言われても信じただろう。
藤村も微かに気圧された雰囲気だ。「岩船さんと親しい女性なら新顔としてご挨拶でもと…ね、殊勝にもそう考えたのさ」それでも藤村はすぐに気分を整えてそう言った。
俺はなんとなく彼女の手首の時計とブレスレットを見ていた。特に凝った様子のないものだが、どうして身につけている装身具は合計すれば軽く1千万近くなるはずだ。アンティークの逸品ばかりだ。それを見事にコンディションを修正している。かなりの額がかかったはずだ。趣味は良い。1930年代のテイストで統一している。
それを、ただの古ぼけた骨董趣味に見せないだけの服の選び方を知っているし、外国暮らしをしたと思しい仕草が独特の雰囲気を醸し出している。
「香月さん…と呼ぶのも妙だな。やはりママと月並みに呼ぶ方がいいようだ。俺と藤村は岩船さんの…そうスタッフに鳴ったと言う訳だ。この間は話す機会も無かった。岩船さんが何んと話したかは知らない。暫く…たぶん暫くの間仕事を一緒にやる事になった」
「久我…さんでしたわね。岩船は上機嫌でしたよ。久しぶりに面白い、と。こうも言ってた、幹部候補生か…それとも俺にとどめを刺すのか、彼らとの勝負だ…って」
「なるほど、組織の誰もが知らない岩船さんを知っている。そう言う事か」俺は藤村を見た。
藤村もママのものごしと、会話から逆に岩船の真の性格を測っているのだろう。
「あ、そうそう。カーク高階。彼は岩船がいのちを助けて函館に連れて来たの。だから彼にとって岩船は何よりも、誰よりも大事な存在なのよ」
「だから、岩船のさわりになりそうなものは、事前に処理するの。岩船がどう思っているか…と言うよりも彼がそう感じればね。彼が本気になると怖いのよ。それなりに子飼の子分たちも持ってるし…」
なるほど、岩船の人間に接して感じた違和感はある程度当たっていたらしい。だからと言って何かが変わるものでもない。
「そう。今度船が来るそうね。その時、お客様を案内して城戸と言う男が帰って来るは。ジョーとはそりが合わないタイプの男よ。彼は別な意味で怖いわよ。」
俺はひっかかりを感じた。城戸…か。ジョーとは合わない…つまりは相当な悪党ってわけだ。
「挨拶は済んだな。レコードも時には聴くが、だからって歌いたいわけじゃない。久我、行こうか」
藤村も何かを確信したらしい。だが、こいつもそれで行動が変わる訳じゃない。
俺は繭子の残したものでもうひとつ知りたい事があった。
カメラバッグの女が知っているのか、それとも浅部がまだ隠しているのか。その誰もが知らない事がまだあるのか。
船が来るまで時間はそれほどない。

はい、今回はここまで。浅部が手に入れた4年前の謎のロシア船員の写真。それは何を差し示すのか。
はい、面白いですね。いゃー、いい加減な小説ってほんとに良いですね。

霧笛が俺を呼んでいる…第11回

ホテルに戻ると珍しくマダム細川が電話ではなしていた。
「そうよね。残念ね。だんだん自分が馴染んだ顔と風景が時間とともにフェイド・アウトしてくのね。あ、じゃ、またね」電話を切ると俺に向かっていつもの皮肉めいた目元だけの微笑を投げかけた。
「あんたも艀って喫茶店…知ってたよね。40年やってたけど、今度閉めちまうのさ。で、昔からの連中が集ったんだよ。フフッあいつ…ジョーとやらも来てたよ」
俺は思わずロビーの椅子に座った。コルトのジョーがそんな日常的な普通の人たちと入り交じる風景が想像しにくかったのだ。意外な事を聞くとこちらの行動まで狂う。
「あいつ、片付け忘れた置物みたいに、隅っこで憮然として珈琲をのんでた。桜子って娘に笑いかけようとしたら、笑いを作ろうとした機先を制して、思いっきり、嫌い…!!って目つきで睨まれてたよ」
その話を聞きながら、俺は小さな疑問を感じた。
だが、いま考えても仕方が無い。間もなく、沖合に船が現れ、中国マフィアがくればいろいろなものが動き出す。
全てはそこに賭けるしかない。
刑事の浅部も常連だったらしい。艀は俺も一度入った事がある。店主の人柄と歴史が生み出す、おちついた雰囲気の、こざっぱりとした店だった。
珈琲も美味かった。だが昭和の香りと言うやつなのか、妙な懐かしさと、何かしら、「きちんとしたいとなみ」と行ったものが創りだす味だと思った。
その時の俺は桜子と言う娘がカメラバッグの女だと気づかないままだった。
一瞬だけなごんだマダム細川の視線がいつものように皮肉めいたものに変わった。カードを手にしている。
「随分と危険なきざしが出てるね。闘いのカード。つまんない事でいのちを投げ出すんじゃないよ」
俺も椅子から腰を上げた。
「投げ出さなくても、いのちってヤツは消えどころが決まってるものさ。俺はそう思ってる。死ぬやつは真っ昼間にのどかな居間でも死ぬさ。死なないやつは戦場のど真ん中でも死なない」
「…そうだね。でも生きようと思わなくなったら…そんな気が無くなったら…死神はすぐに隣に来るよ」
「そうかい。せいぜい生きたいと祈る事にするよ」
俺は部屋に戻ると拳銃を分解し、部品の精度を確かめた。組み立て直し、弾倉の動きを確かめた。
ジョーが寄越した弾丸には何んの問題もなさそうだ。フルメタルジャケットの38口径弾。
この弾が減った分だけ死人がでる事になるのか。
使い慣れた銃はペルーの山奥で錆びて、朽ちているだろう。またこんなものを手にするとは思わなかった。
久しぶりにホルスターからの抜き撃ちの動作を繰り返した。
こんな動作はすぐに戻る。俺はためらう事なく人影に向かって引き金を引けるだろうか。
ふいにコルトのジョーのニヤニヤ笑いが浮かんだ。それは「お前ぇはそん時には必ず誰より確実に撃つよ」と言っているようだった。
夜になると藤村から呼び出された。「歌声喫茶とやらに行かねぇか」と言うのだ。
例の岩船の部屋にいたママも確かに気になる。
「俺とお前が行ける店か。入ったとたんに客に嫌われるぜ」
「まぁ、大丈夫だろう。これでジョーまでくっついてりゃ判らんが、俺とお前なら…悪人づらってものでもないだろ」
見当もつかない店だ。とにかく上質の木肌にアールデコの模様が四隅に施されたドアを開けた。
店内は予想に反して歌声とか、合唱が響いているって訳じゃ無かった。
もっとも本気でアコーディオン抱えたコーラスリーダーが善人そのものの笑顔で歌っていたら、むしろその方が恐ろしい。時代錯誤も程度問題だ。
落ち着いた風情の夫婦夫婦ものらしい客、中年のグループがひと組。シャンソンが流れていた。
奥のカウンターでママが高齢の夫婦らしい客と話していた。
いかにも優しく、華やかな笑顔だ。
俺たちに気づくと、少し眉をひそめ、それとなく奥まった席へと視線で促して来た。
席につくとウエイトレスが注文を取りに来た。
ふたりとも珈琲を頼んだ。差し出されたメニューにはむしろ紅茶の類いが数多く書かれていた。
ママの名は香月美奈子。岩船の女だと言う事は判った。だが、それだけなのか、何か組織の中で重要な役割を果たしているのか。藤村はそのあたりの感触を探りたいのだろう。
船が来るまでの時間を無駄にしたくないらしい。頭に入れる事は全て確かめたいのだろう。

と、今回はこんな所で。

失くしたものと過ぎ行く時間。

知人のMr.Bとかレディー・ノスタルジックなどのブログを見ていると、ちゃんと「暮らしと人生」がある。だから人柄や趣味性が素直に出ていて心地よいものが描かれたり、記されたりしている。
そこへ行くと、僕のはあからさまにハチャメチャだなー…と改めて思う。「暮らし」と呼べるほどのものはなく、「人生」と形容できる内容が皆無だものなー。
ただ無為の時間が過ぎて行く。その時間の中でウロウロと漂っている…と言うのが僕。
瞬間の訪れた、あるいは巡りきた時間をなにかで埋めなくては…と言う反射的な刹那的な想いと行為だけがあるんだよねー。これって、相当にヤバい。どうかすると明日ってものが色褪せたものにしか感じられない。
昔、同じ想いで日々を過ごした事があった。ひきこもりのモラトリアム…まー、そんな若い日の数ヶ月。
しかしあの時は若かった。身体にも精神にもバネがあった。無邪気に明日を夢見たりできた。
ところが初老…って言うか、高齢者の入り口にもなると退嬰的な気分にしかならない。
オロオロと生きてる分だけはた迷惑かなー…とか、つい考えてしまうのですね。
他愛無く、ひとり遊びだけ上手い…と言うこの困った人格はどうにもならないしなー。眼の前の必要ななにかに、とりあえず反応しながら時間をすごしている。ふっと…気を抜くとなにかボワンと消えてしまうように頼りない日常だなー。と、これが正直な気分ね。さて、何か食べて、寝よう。また、明日って時間が巡る。
なんだか今夜は、こんな存在感の希薄な僕なのです。

霧笛が俺を呼んでいる…第10回

ホテルを出ると刑事の浅部がまっていた。
「どうも急に雲行きがおかしいな。久我…呼び捨てにさせてもらう。少しお前と話したいんだがな」
「俺は、函館酒場ってとこに珈琲を飲みに行く。そこで良けりゃ聞くぜ」
「深江の所か。ふーん、なるほど。危険な綱渡りか。いいぜ、俺もやつの珈琲なら久しぶりに飲みたいからな」
大昔のカーマニアなのか浅田はスカイラインGTなんて時代錯誤な車に乗っている。浅部の無邪気な一面なのだろう。
函館酒場へ入ると深江はまるで彫像のように夜と変わらぬ姿でカウンターに居た。
「これは刑事さん。珍しいですな…」そう云いながら素早い視線を俺にも向ける。
「久我がお前の珈琲を飲むと言うからな。俺もあんたの珈琲以外のほろ苦さが漂う一杯が恋しくなったのさ」
「酔狂な事を…、暫くお待ち下さい」
深江は一杯ずつ豆を煎る所から始めるらしい。浅部が深江に向ける視線はどこか優しい。
「あいつがこうして流行らせてはいけない酒場をやってるのは…、岩船のセンチメントな部分でもある。寂れた店を買い取って深江を住まわせた。ある時期は深江もこの店も普通だった。ジャズの趣味は一流なものらしい。特別なジャズマニアってものでもないらしいが趣味が良いってやつだろう。だが…ま、もう良いのか。この路地の奥の倉庫とか、2、3軒の建物が誰も知らないうちにとんでもない規模で改装されたらしい。地下もいじったようだ。建設会社も岩船のものだし、役所は抱き込まれているから、実態は判らない。判らないまま工事は終わったようだ。それ以来、深江の店はことさら客に気づかれないようなものになって来た。深江なりの岩船への忠誠だろう。東京で廃人寸前のあいつを拾って、店と人生を少しだけ取り戻す時間てやつを岩船は与えたって事だ」
「詳しいな。警察を辞めても調査員の仕事ができるぜ」
「久我、お前も藤村も危険な綱渡りで何かをつかもうとしているな。止める気はない。しかし、俺に手錠をうたせるような事にはなるなよ」
「あんたにしては似合わないセリフだな。俺と藤村の死体がそこいらの路地に転がってるくらいが都合がいいんじゃなかったか」
「俺も最近国会議員や市長を隠れ蓑にして、自分を小さく見せて来た岩船のやり方に気づいた。見方が変わると岩船の実力も、狙いもいままでとは違うものとして見えて来た。お前たちがもくろみの途中で誰かを殺したり、殺されたりなんて事になるとまずいのさ」
そこへ深江が珈琲を運んで来た。香りだけで濃い味覚が知れる上質の珈琲だ。
「浅部さん、時々は珈琲のためにお立寄り下さい。最近良い仕入れルートを知りました、上質の豆を入れましたから」
「あー。俺が頻繁に立ち寄れる場所か。客を拒む雰囲気だろう」
「まぁ、特定の方はあまり関係ありませんので、どうかお気楽に」
なるほど、深江の珈琲は味わい深いものだ。浅田の言うほろ苦いって事もなんとなく判る。
珈琲椀が控え目なウエッジウッドなのも深江の本来の趣味なのだろう。そして、そうした深江の在り方をこうして許している岩船の心情も少しは理解できた。
男ってものは厄介だ。おかしな純な所を棄て切れないくせに、とんでもない悪事と非道の道を走り続けている。
俺はジョーが見ていた監視カメラの画像の古いやつを見るつもりだった。
カメラバッグの女が写っていた事から、繭子が写ったものもありそうな気がしたからだ。

と…言う事で、後へ続く。

大人の仕草と趣味。酒・煙草そして…。

昔のアクション映画には、ちょっと眉間にシワを寄せて煙草を吸う主役がいた。アクション場面で指で煙草を弾き飛ばす仕草も当たり前だった。最近はそんな事をすれば社会の敵である。
悪人まで路上で煙草を吸ってて、消す時はポケット灰皿なんてだしかねない。
例えばギャングとかね、悪人が急いで車に乗る…とする。昔は「おい、急げ…」とか言って車の中で拳銃なんか出したりした。いまはどんな悪人も、無法者もちゃんとシートベルトをしめるんだよね。以外に善人なんだ。
カウンターにはダイスのセットが置いてあった。酒場にはちょっと悪そうな雰囲気があった。
酒場とジョークはつきもの。気の利いた酒場のトークネタくらい紳士のたしなみだった。映画の話、小説の話、男と女の粋なトーク。趣味の話もさまざま。くだらない下ネタだけではバカにされる。
とは言え、なかなかこんな「大人の酒場」には出逢えないし、こっちも紳士にはなれてない。
難しいですね。
煙草をやめたい・止めてみる。やめられない。この繰り返しの日々。いよいよ、なんとなく止めるような気分に鳴っては来た。
ただ、煙草のもたらす「ある気分」には未練があるのですね。紫煙…なんて言葉が懐かしい。昔は「ベッドで煙草を吸わないで…」と歌われた。いまでは「どこでも、いつでも吸わないで」
生きにくい世の中です。

霧笛が俺を呼んでいる…第9回

コルトのジョーが俺たちを誘ったのは暗い秘密だけを詰め込んだ倉庫を見張る位置にある、曙町の路地。その角にあるBAR函館酒場だった。暗い電灯看板だけでほとんど客を誘う気がない酒場だ。それでもきまぐれに好奇心と、偏った趣味の客が訪れる事もある。そんな時は初老の男がバーテンとして応対する。
この男は深江彰(あきら)と言う。かつては銀座の一流のバーでシェーカーを振っていた。女の事が原因でやくざともめた。女を麻薬の苦しみから救うために自分も一流の暮らしを棄てて流れ歩いた。女は死んだらしい。
この潮騒の街に流れて来て、岩船の知遇を得た。見張りだけの店にそのまま忘れ物のようにいつも黙って暮らしている。
ジョーはシングルモルトを香りを愉しみながらのんでいる。
「なるほど岩船のやり方も度胸がある。それなりの男だな。繭子の事を探りたい俺の、もうひとつの面にいきなり食い込んで来た。自分をまるごと賭けるヒリヒリするものを求める所だ。その修羅場を味合わせてやるから、好奇心と正義漢を眠らせろってわけだ」俺はそう言った。
藤村もにやりと笑うとロックのウイスキーを呷った。「まったくな、昔話より、お前の好きな荒事に放り込んでやるから、思い切り遊べばいい。と、そう言ってる。俺と組めばまだまだ面白い眼を見せてやる…ってね」
「ヘヘーン。で、お前たちは狙い目を脇へおいといて誘いに乗ってみた…と。Ok、OK…」
ジョーは細々話さなくても会話以外の部分を理解したらしい。
「さて、ビジネス・オン・ザ・テーブルと行こうか。1ヶ月後に海峡に船が来る。ハジキやヤク、洗濯したいドルの札束…そんなものを金にして20億分ほど積んでな。ついでに香港から洪連金、宗文明なんて大物が来る。で、ロシアルートのコネクションを作ろうって話さ。ここでまとまれば岩船と連中はすぐにサハリンだ。もちろん密航だ。
相手は警察と軍を抱き込んで沖合まで出張って来る。フョードルフと言うロシアン・マフィアの極東のボスだ。
なにしろ、中国とロシア相手だ。どんな奴らが来るのか、どんな道具が隠されてるか読めない。相手はよ、下手すりゃ、ロケットランチャーくらいぶっ放しかねないのさ。
で、実力あるガンマンがほしい。俺もひとりじゃ手が廻らねぇ。そこへうろつき始めたのがお前ぇたちさ。クックク…。ご機嫌な話だろ」
藤村が声もなく笑った。「久我、お前が魅せられるいのちまでヒリヒリする話だな」
「俺は、以外にのどかに生きてもいけるんだがな」俺はなんとなく呟いた。
ジョーがそっぽを向いたままひとりこ言のように言う。
「いんやぁ。惚れてくれた女と静かな暮らしを置いて船に乗ったような男は…所詮のどかになんて生きられネェ」
こいつはなにもかも知っているようだ。「
どこかで船の汽笛が鳴っている。その時、深江がテーブルに来た。こいつはほとんど足音を立てない。
囁くような声でジョーに告げる。
「かなり離れた場所に最近不審な人影があります。ただの観光客にも、通りすがりにも見えますが…あれはサツの匂いがします」あまりくちびるを動かさないが、至近距離にははっきり聴こえる喋り方だ。
ムショにくらいこんだヤツが身につけるやり方だ。
ジョーは眼を細めた。「十分機を配ってくれ。しばらくはつまらねぇ騒ぎも起こせない。年寄りの散歩とか、近所の掃除とか…いろいろあるだろ…なっ」
深江は面白くもなさそうな顔だ。「そうですね、最近運動不足ですから…」深江はカウンターに戻った。
店を出る前にジョーは監視カメラの画像をハイスピードでチェックした。その素早く変わる画像記録の中にあのカメラバッグの女が写っていた。

と、ここまで。さぁー、どうしょう、この後の展開…。

霧笛が俺を呼んでいる…第8回

岩船との会談は終わった。「当座のギャランティー。それなりの働きをしてくれたらさらに納得できるものを渡そう。もう一度言うが、お互いのわだかまりを越えておもしろい事をやろうじゃないか」
俺と藤村に300万円ずつの札束が渡された。
「後はジョーにまかせる」そう言うと岩船はデスクに戻った。
「ヘッへへ。随分とおかしなトリオができたもんだ。まぁ、こう言う展開も嫌いじゃねぇ…」ジョーは愉しそうに俺たちを先導した。部屋を出て別の階段を下りた。地下道があった。2度曲がり、またコンクリートの階段を上がる。
鉄の扉を開けるとそこは明らかに本格的な射撃場だった。
「こんな場所を見て驚くようなトーシロでもないだろ」ジョーはそう言うと小部屋のスチール棚を開けた。さまざまな拳銃があった。
「好みのものを取りな。撃つと手首が吹っ飛ぶようなオカシなものはねぇ。米軍経由の優れモンってやつさ」
藤村も腹を据えたらしく表情も変えずに短銃身のリヴォルバーを取った。コルトローマン。2インチ半のスナッブノーズだが38口径、マグナム弾も使えるやつだ。腰につけたコルト・ディテクティブをかわりに放り込んだ。
ジョーはニタニタしながら50発入りの弾丸カートを出した。
藤村は弾倉をスゥイング・アウトして覗き、銃身の中も確かめている。
俺はS&W・M547。3インチ銃身のリヴォルバーを取った。
「随分と渋いものが好みだな」笑いながら俺にも50発の弾丸を寄越した。
ジョーは上着を脱ぎホルスターごと銃を下ろした。
「普段は目立ちすぎるから小さいヤツを使ってる。だが今度はハードな場面がありそうだ」
そう言うとコルト・ガバメント・マークⅣを取り上げると装填済みのマガジンを叩きこんだ。
「使いやすいホルスターを勝手に持っていきな」
別のロッカーにさまざまなタイプのホルスターがあった。
ジョーは俺たちを促し、射撃場の階段を登った。ほぼ。地下2階分の階段だ。上がるとそこは倉庫だった。
大きな木箱がぎっしりと詰め込まれた、暗い倉庫の通路から重そうな鉄扉を開けて外へ出た。
そこは風森町から離れた、昔の職人町、曙町の一画だった。
倉庫は路地の突き当たりで、入り口の角に小さなバーがある。えらく暗い小さな看板がぽつんと下がっていた。
ジョーはそのバーへと入った。低く古いジャズが流れている。客の姿はない。
カウンターには初老の男がひとりいた。バーテンとしてベストを着込んでいる。
「向こうのテーブルにバーボンとウィスキー。暫く使うぜ」
バーテンは黙ってかすかにうなづくいて支度をした。
「さて、久我に、藤村。ちょいと深い話ってのをすましとこうか。何しろ俺たちは岩船に見込まれたガンマントリオだ。仕事の話は俺から伝える。後はお前ぇたちの気持ちの整理って所だ。ボスは毒には毒を…危険な獣を上手くあやつろうってワケだ。お前ぇらは虎穴に入って虎の子を手に入れたい。
俺としては…一応ボスのために仕事が終わるまでの品質保証ってのをまかされた事になる」
そう言うとジョーはニタニタと例の笑いを浮かべた。

と、今回はここまで。
映画だとスピーディーに展開する場面ですが、書くとねー…。
ではまた。

信長…創造を刺激する革命児

ゲッサン、つまり月刊坂でーに連載されて人気の「信長協奏曲」と言う漫画作品があります。
これにとどまらず、信長に関する小説は、まぁ実に多いのです。「架空戦国歴史モノ」など、「信長が本能寺で死ななかったら」と言う前提にたったものが何種類もあるのです。
さらに信長以後…の架空歴史では真田幸村・伊達政宗などが家康に変わる覇者として活躍したりもする。
歴史の「if」は面白いのです。「もし、信長が本能寺で死なず、さらに10年日本を統一し、統治したら、その五の歴史はどうなったか…」「信長なら秀吉・家康と異なり、海外に進出しただろう」「西欧艦隊とアジアの海で大海戦をやったかも知れない」など、さまざまな想像を刺激するんだよねー。
架空戦国歴史モノでは秀吉と信長、家康と信長も当然、天下を争って戦うのです。
信長と言う存在が無ければ「中世の体制」のままだった日本。武田も上杉も、毛利も四国の長宗我部も、今川家など、すべての有力大名の基本的な意識とその軍事体制は中世・室町時時代のままだった。
兵員の動員は戦うと決まり、主立った家来たちがそれぞれ地元の兵隊を連れて集って来て軍隊を組織するのです。
これだと、主力の足軽集団はお百姓なので「農繁期」に戦争に行きたがらない。
信長だけが年がら年中、戦争できる専門の兵団を組織した。この軍隊はそれぞれ有力な家来、つまり秀吉とか明智光秀とか柴田勝家とかに貸し与えて、臨時の指揮権を持たせて戦争をしていた。
かいがいじじょうにも関心が深く、新規な分かや道具書きな、こんな信長が生き延びたら、日本のアジア進出も早くなっただろう。秀吉・家康と言う天下の流れも大きく変わっただろう…ここが面白い所。
作家・佐藤大輔の架空戦国記「信長新記」は無類に面白く、独特の視点で素敵だけど3巻までで中断したまま。
早く続を書いてくれないかなーー。
今夜は信長のお話でした。

霧笛が俺を呼んでいる…第8回

コルトのジョーはドア近くの壁に寄りかかっている。藤村はもうひとつ展開が判らない表情だ。藤村が思い込んでいたのと岩船の人物像が違っていた事にもよる。男は立ち上がると細巻きのシガーに火をつけた。
「わたしが岩船だ。こうして会うのは初めてだな」いやに柔和な表情のままだ。
「皆さん、お座りになって…」蓮のママが飲み物を運んで来た。「暫くはずしていてくれ」岩船が言う。
「男の方々はど゛うして仲間だけで遊びたがるのかしら…フフッ」と婉然とした笑みを残してママは別のドアに消えた。
「わたしは優れた人材が欲しい。この世界は多少のいきさつがあっても、手を組んで面白い事ができる…そこが良いんだが…唐突かもしれないが久我さん、あなたにも私は興味がある。調べてもある」
「藤村さんも、期待できるものは大きい」
俺はイヤな気分がした。忘れたい過去をこいつらはわざわざ見つけてくれたらしい。
「久我さん。この函館を出てあなたは南米にいましたね。なかなか激しい経験をしたようだ」
「昔の事だ。あんたには関係のない話だ」
「そう。だが軍隊にやられかけた村人とともにゲリラ戦を経験した。ロボ…狼と渾名されるほどの凄腕のガンマンだったとなると、大変興味深い」
ジョーが眼を細めて小さく「俺のカンに狂いはなかったなー」と呟いた。藤村はまた微かに驚きを示した。
「若気のいたり…その場の成り行き…と言うやつさ。船に乗ってる間にみんな潮風が持つて行ってしまったよ」
俺はバーボンを飲んだ。
その瞬間!!岩船が身体を沈め、左手でリボルバー拳銃を俺に投げた、同時に右手で別のオートマチック拳銃を抜いた。俺は反射的につかみ取った拳銃を手の中で廻し、激鉄を上げ、岩船に狙いをつけた。一瞬…とも言えない短い時間。岩船の動きは正確に銃口を俺に向ける直前の角度で止まった。
岩船は笑った。
「お前の身体は忘れてはいないようだな。今の動きはペルーのロボそのままだろう」
俺は手の中の拳銃を見つめた。S&Wのリボルバー。早撃ち用に握りが改造されたタイプだ。
拳銃をテーブルに置いた。
「よしてくれ。ここは日本だ。ペルーの山奥じゃない。俺にはハジキを持つ理由がないよ。弾倉が空のハジキを振り回しても仕方がない」
岩船はニヤリと笑った。「さすがに重みで判るだろうな。弾はジョーに言えば幾らでも出してくれる。そいつはプレゼントだ」
相手にとっても、こつちとっても危険な賭けだ。それでも俺たちを使いたい大勝負を岩船はしようとしている。

と…ここまで。後、どーーしたらいいんだろう。またねーーー。

そうだ「旅」に出よう。あてどない旅に…ってホームレスとは違う。

普通、旅行つて言うと、行きと帰りの予定が決まってる。でも「旅」って言うと、目的も行く先も決めてない…なんて感じですよね。さすらい…彷徨、漂泊…、ムッフン憧れます。けれど相当の体力と気力がないと、そして経済力もねー。漂泊の佳人・吉井勇なんていい所のお坊ちゃんだものね。で、酒と旅に明け暮れ、女性を遍歴する。
高等遊民…って言葉があった。大昔の事です。お金に不自由もしてないし、家柄もある。学歴もダントツで高い。
でも、職業も持たず遊戯的人生生活を送る。優雅なホームレスね。そんなそんな風に誘われて旅に出る…なんて旅がしてみたい。今度は神戸・倉敷に行きたい。大阪・京都はよく行ったけど、あっちは知らない。
神戸と岡山に知人らしき方もいるので誘われてもいます。行きたいなー。
今回は異例に短いブログ。では、また。

正義と真実の使徒…ってさー。

探偵・多良尾判内が藤村大造。これは書いたよね。この2丁拳銃で最後は撃ち合いをやって悪人を退治するおじさん。
意味があるのかないのかわからないけど変装をして事件の解決にあたる。誰がみても「片岡千恵蔵」にしか見えない変装。でね、自分で「ある時は手品好きのキザな紳士」って言うのが爆笑もの。
最後の大詰めで大概ボロボロの浮浪者、それも何故かせむし男の出で立ち。それが悪人たちの前に現れて、事件の真相を語り始める。
「何者だ」と言うとボロボロの衣服に手をかけ、一気にはぎ取ると…一気にはぎ取れる所が、もう、無茶なんだけど。不思議な事にダブルのスーツにネクタイ姿、しかもどっからだしたのかソフト帽までかぶってる。シワひとつないスーツです。007の潜水服の下のタキシードも顔負け。
で、悪人の前に2丁拳銃で立つと、事件の真相を語る。よく考えたら悪人たちは自分たちがやった事だから当然一番知ってる相手。これは映画のお客に説明してるだけなの。
で、悪人たちも語り終わるまで、何故か身構えたまま聞いている。語り終えると、やっと想い出したように拳銃を撃ち始める。さぁ、ここからが凄いさすがに時代劇役者の片岡千恵蔵、飛んで来る弾丸を右、左に身体を振って躱すのよーーー。手裏剣とか、弓じゃないのにねー。
そいでさー、事件解決した後、いつ、どこから運んで来たのか外車のオープンカーで立ち去る。さっきまでビルの地下室だつたのに立ち去る場所は海岸の道路。現代アクション映画のはずが松の木に紙に書いた別れの言葉が貼付けてある。それも下手な詩みたいなのが。
佐久間良子なんかがそのオープンカーの消えたあたりを見つめて「藤村さま…」とか呟くと言う。
ぜひDVDなどご覧下さい。爆笑間違いなし。
こう言う事書いてるときりがない。幾らだって書ける。
では、今夜はここまで。シー・ユー・アゲインね。

書かずもがなの「途中解説」

素人のいい加減な「小説もどき」まー、落書きみたいな「霧笛が俺を呼んでいる」の途中解説。どーせ2,3人くらいしか読んでないブログなので解説した方が後を読む理由くらいはしてもらえるかと言うわけ。
深夜2時に、幸せ薄い初老の男がこんな事やってるってのも、なんだろうね。あてどない日常なのです。
閑話休題・それはさておき。
これは古い日活映画へのオマージュ…ってくらいのつもりはあるのです。コルトのジョーは宍戸錠・久我はイメージとしては赤木圭一郎ね。藤村泰三。これは実に複雑な連想ゲーム。ほんとは素直に滝伸二にしたかった。つまり「渡り鳥シリーズ」の主人公・滝伸二=小林旭。で、それがなんで藤村泰三かと言うとー。
藤村泰三はほんとはほんとは「藤村大造」と書くべきなのね。藤村大造は実は宝石泥棒。それがある時から反省なんかしていきなり「正義と真実の使徒」になっちゃう。普段は「多良尾判内」と名乗る私立探偵として返送してる。ご存知…ってこの平成の世の中、誰も「ご存知」じゃないよね。「七つの顔の男」として「ある時はせむしの老人・ある時は易者・またある時は手品好きのキザな紳士・またある時はヒゲの警官、そしてまた片目の運転手・時にはインド人・そして普段は探偵・多良尾判内」こんなインチキきわまりない主人公を大昔「片岡千恵蔵」と言う時代劇俳優がやってた。その昭和版を小林旭がやったの。あー、長い説明だ。
死んだ「繭子」ののイメージは「芦川いづみ」と言う女優さん。当然日活です。日活映画「霧笛が俺をよんでいる」は赤木圭一朗と芦川いづみの共演なの。映画とこのブログの適当小説は内容が全然違うんだけどね。
日活映画の影響は北方兼三とか矢作俊彦の作品にも顕著ですね。
北方兼三の「ブラッディードール・シリーズ」はまんま日活映画とその出演者たちを戴いている。矢作俊彦はもっとはっきり小林旭や宍戸錠をあきらかなかたちで使ってます。カーク高階なんて「高階 格」って言う俳優の名前だもの。
矢作が好んで使う「アントニオ・バルガス」と言う名前はある映画で「石原裕次郎」が使った変名。フィリピン人のパスポートで、それも船で日本に復讐に帰って来ると言う、映画。その帰国の船の中で浅丘ルリ子と恋に落ちると言う、「おい復讐の途中だろーに…」と突っ込みたくなるご都合主義な映画です。
ま、そんな事で適当小説「霧笛が俺を呼んでいる」の今後にご期待下さい。
って…どう期待すればいいのでしょう。    では、また、本編で。

霧笛が俺を呼んでいる…第7回

おかしな場面になった。藤村とジョー、そして俺の三人がキャバレー・ババーライトのカウンターで飲んでいる。
支配人のカーク高階は許されるなら俺たちを皆殺ししたいとでも言うような形相で奥へと消えた。「なぁ、久我、コルトのジョーはを甘くみないでくれ。お前は気まぐれで俺を尋ねて来たんじゃないんだろ」
「ほぅ。俺の行動の意味を読んだってのか。ま、駆け引きはなしだ。藤村の話を聞いた。どこかに違和感があった。
こいつの話と繭子の死んだ事がもうひとつしっくりこない。で、藤村が思う坪にはまって幻影をみせられてると思ったのさ。なぜなら…こいつは殺されもせずうろうろしている。いや、うろうろさせてる方が目くらましの効き目があるから…そう考えた。すると、何かが見えて来た」
藤村は唖然としている。「どう言う訳だい。俺がどんな目くらましにひっかかってると言うんだ」
ジョーがニタニタ笑う。
「ものが見えすぎると、危ない。と、言って…止まるヤツでもないか…」
カーク高階が再びやって来た。
「綺麗事は終わりだ。久我、藤村、ボスが会うそうだ。ついて来な」
「ホッホー。異例の謁見てわけだ。お前らは国賓待遇だぜ」ジョーがことさら笑う。
カーク高階はそんなジョーを睨みつけた。「いい加減にしろ」
奥へと向かい、ウエイティングルームらしい部屋へと入った。暖炉があった。暖炉の両側に自然の丸太を模した飾りがある。その丸太の先端が鷹の彫刻になっている。丸太の鷹だ。
カーク高階が右の鷹の何処かを押して廻した。暖炉が引き込まれ、横にスライドした。もうひとつのドアが現れた。その奥は…思った通り秘密のカジノだつた。奴らの本業と言う訳だ。
ルーレットやカードのテーブルが並び、乗客らしい連中が遊んでいた。現金が無造作にやりとりされている。
さらに奥、階段をあがると、またドア。そして、その最後のドアの中は、随分と
上質な見事な趣味の部屋だった。一画に小さめのバーカウンターがあった。そこにカクテルドレスを着込んでグラスの用意をしていたのは歌声喫茶のママだった。
藤村は驚いた様子だった。
部屋の奥、大きなデスクに男がいた。こいつが岩船だろうか。細身の俊敏そうな身体つきだ。鋭い眼をしている。
しかし表情はゆったりとした感じだ。不適な…と言える物腰だ。俺たちを冷静な視線で見つめて来た。
俺は確信した。世間で言われているような「大物の使いっ走り」で収まる男ではない。
むしろ使うタイプだ。岩船は微笑した。そうすると柔和と言っても良い雰囲気を漂わせる。大したものだ。

さて、ここまで。どーなるのかなー

遊牧と騎馬・馬の話3

人類史上、羊や馬の群れの中に入り込み、彼らとともに移動すれば食いっぱぐれない…と誰かが気づいた。飼育や牧場で飼うというのは実は相当時代が下ってからの事。
動物の群れの中に入り混じって生活をする。これは生活文化の「大発明」だったんですね。動物の群れは一定の季節の草を食い尽くすと移動する。人もそれに従って移動する。動物の群れとともにいれば食料と毛皮や骨などの道具・素材にも困らない。移動するのが前提だから住居は組み立て式のテント状態、簡単プレハブ方式になる。
一時的に設営するだけで常に移動するから都市は築かない。
現代に伝えられているモンゴルのゲルなどがこれですね。
さて、馬。もともと野生で群れていた。誰かが、ある時股がった…のでしょう。最初はたてがみを掴んでしがみつくような乗り方。やがて、紀元前の遥かな昔、「はみ」と言うものを馬の口に噛ませると自在にあやつれる事が発見されて。手綱とはみ(轡・くつわ、ですね)で人は馬を移動手段にしたのですねー。
古代スキタイ文明は遊牧文化であり、騎馬によって実現したものです。
ギリシア神話の人の上半身と馬の身体を持つ「ケンタウロス」は初めて騎馬の民族に遭遇し、攻め立てられた古代地中海民族の驚きと恐怖が生んだものとも言われています。
はみと手綱の次に鞍が発明され、鐙(あぶみ)がつけられた。かくして人は馬に乗る事になったのです。
現代の「ズボン」野ルーツはこの騎馬の民の服装から始まっています。
古代ギリシアのトーガも古代ローマの服装も「ズボン」的なものはないんですよね。腰と股間を巻いて包む、後は大きな布を身体に巻き付ける。映画でも見るように古代ローマ兵士の下半身はスカート状でしょ。
オスマン・トルコなどアラブの騎馬の民がズボンのようなものをはいていたのです。
日本馬と違い、ヨーロッパの馬はでかい。ブルシュロン系の農耕馬の直接的祖先と言えばいいのか。胴体も太い、脚もでかい。クビも短めで、やはり太い。古代ローマ時代などはこの系統の馬です。
この原型的な農耕馬のどでかい姿は、あれが野生のままで群れをなしている所を創造すると「猛獣」ですものねー。
アラブ種と呼ばれる、中近東の馬はやや細めだった。古代中国では「汗血馬」と呼ばれていた。シルクロードを通して、またそれ以前の中央アジアとの交流で中国の馬は比較的大型になってもいったのです。
十字軍の遠征や古代トルコ帝国の地中海一帯の制服などの歴史の激しい交差が馬の交配をうながしのですね。
やがて近代に入り人工交配で「サラブレッド」と言う「早く走る」と言う点に特化した馬が完成したのです。
だから…日本でも、ヨーロッパでも18世紀以前のドラマにサラブレッドが出てきたら、ほんとはおかしい。
関心するのは最近見た「ロビンフッドものです・ラッセル・クロウのもの…ね」のイギリス古代を舞台にした映画はちゃんとブルシュロン系の太い、でかい馬を使っていた。
と、言う事で馬のお話、その3でした。

日本の馬の話…その2

源平合戦の、源義経の活躍で知られているのが「鵯越の逆落とし」読めないかな、「ひよどりごえのさかおとし」ですね。現在の神戸の近く、一の谷に陣を展開した平家軍。前は海、両側を守れば敵軍は細長く、つまり少しずつしか攻めてこれない。
この当時この戦略は常識的で鎌倉も、北海道の松前もこの思想で防御を考えた。だから、山が迫った地形の所に町を開いた。
背後は「鵯越」といわれる崖。だから、こっちから来る腰はない…これが平家の戦略。ところが、源義経と言う正規の武家生活を経験してない大将は当時の戦争・戦闘のマナーも常識もなかった。
大きく山道を、どえらい苦労して迂回し、この崖の上に現れた。実際、そんなに切り立った断崖絶壁と言うものでもなかった。ただ、騎馬の鎧武者が馬に乗って、駈け下るってのは「そりゃ、無理だろう」と言うくらいには急峻な坂だった。義経は地元の猟師に聞いたのです。「山の獣は通るのか」と。猟師は「はぁ、鹿なんかは上り下りしてますけんどもー」と答えた。鹿って、かもしかとかでも崖とかを歩く。でも馬のひづめとは違うんだよねー。義経くんの判断は、そっからが普通の侍と違って、おかしい。
「鹿も四つ足、馬も四つ足。だったら行けない事もないんじゃないの…」これを聞いた家来が「そんな馬鹿な」
行ったかどうかは判らない。ともかく「行くぞー」って駆け下り始めた。
後に続く源氏の侍もここまで来ると半分やけになって、「降りるって言うより、ずり落ちるみたいなもんじゃないかーーー」とか云いながら、ともかく義経の後に続いた。
さて、この中に畠山重忠(はたけやま・しげただ)って侍がいて「折角駆け下りても、馬が脚を折ったらなんにもならん」と考え、なんと馬の前足を背負い、やっこら、やっこらと歩いておりた。この話でも、馬が現代のサラブレッドくらいだと、絶対に無理。
小さな日本の馬だつたから、前足を背負い、降りる事が出来た。
さて、来るはずのない背後の崖地からたった30騎ほどと言え、源氏の軍勢が騎馬で駆け込んで来たから平家の陣はおおあわて、浮き足立ってくずれた。と言う。
まー、日本の馬が小さかったから…と言うお話でした。

日本の「馬」

のすたるじっく桜子さんと繭子の交流は以外に深い。久我が知っている繭子とはまた違う繭子の人生を知っている。
繭子の父親が馬により運送をしていたなど、驚いた。「霧笛が俺を呼んでいる」の主要作者としては「おい…」と絶句してしまうではないか。
さて「日本の馬」この「馬」と言う言葉も「うま」というものと「んま」と言う発音系統と実は違うのだそうです。
関東は「んま」の方なんだそうです。
日本固有の「日本馬」はとても小さい。現在木曽駒・宮崎の馬・北海道の「どさんこ」など固有種は希少なもの。
もともとは実に小型で「大きめのポニー」と言っても良いくらいだつた。
八代将軍・徳川吉宗の頃に西洋馬(アラブ種)を輸入して改良も試みられた。
映画やテレビの戦国時代とか、それ以前の時代のドラマにはアラブ種・サラブレッドなどが使われるから勇ましいけど、実際は小さな馬ばかりで、歩行のあしの運びも現代の大型の馬とは違ってちょこちょこ…と犬のように歩いたらしい。
戦国時代、信長に滅ぼされた斉藤道三の長男斉藤龍興は「六尺五寸殿」と呼ばれていた。つまり185センチくらいあったらしい。この六尺五寸殿に股がると馬の脚が6本に見えた…と言うくらい当時の馬は小さかった。
中国・清国の時、「義和団事変」がおきて国際的に欧米各国が出兵した。今日で言うPKOです。明治時代の日本も出兵しました。各国の軍隊のなかで「日本兵は犬みたいな馬を連れて来た」と大笑いされたらしい。
とろが、この日本馬やたら気が荒い。去勢…と云うものを知らなかった。
日本人=騎馬民族説というものも、ここが弱点です。去勢を知らない大陸の騎馬の民はいないんですから。
歴史上、最初の騎馬の民は古代のスキタイ民族。その一部は現代のトルコの祖先の
にもなった。このスキタイ文明以来「去勢」は遊牧民族の常識なんです。
戦国時代に信長が鉄砲の一斉射撃方式で勝利したと言う「武田騎馬軍団」というのも小説やドラマほど勇ましいものじゃないんだよねー。
当時の、つまり明治時代以前の日本の道路と地形の実情からすると騎馬による大集団が駆け回る平地や草原なんて無いんだもの。ある程度の数の騎馬武者がどどっと長槍部隊なんかと一緒にほぼ優勢になってから威嚇的に敵前に迫る…と言う程度のもの。
または他の地方の軍団より乗馬の侍が多かった…と言う程度なんですよね。
だから、三国志や水滸伝などの中国古代の数万人がそれぞれ陣形を組上げて、対峙し、激突する…って言うのはそれだけの大空間、やたらに広大な平原があるから可能なんです。
日本の地形は山がちで、関東平野だって現在みたいに開発されてないから一望広闊な平原はない。現在の東京となんて一面の葦の生える水浸しの場所。
戦国時代の戦闘、戦争って田畑のあぜ道を駈けたり山間の路らしい所を駈けたりとわりあいちまちましてたってのが実体らしいんですよね。
実際の日本固有の馬に鎧姿で乗っかると現代のサラブレッドに乗ってるほど格好よくないのです。だって鎧・兜に身を固め、太刀を差し、弓矢まで身につけて乗ると馬と同じくらいの大きさに見える。
そんなのがずらっと、たとえ並んでもそんなに「すげー…!!!」ってものでもなかったようです。
ついでに言うと「蹄鉄」もなかったから「馬わらじ」っものをはかせていた。のどかでしょ。

繭子の人物像が…

「のすたるじっく桜子」さんのブログの記述、ことに「殺された繭子」に関しては影響を受けながら偶発的・触発的にこのブログの「霧笛が俺を呼んでいる」と言う「ムードアクション巨編」は進行しているんです。
ことに「繭子」の人物像は桜子さんの記述がふくらみを創っている。
いるんだけど…とても魅力的に表現されているので、「霧笛が俺を呼んでいる」の主体執筆者としてはどう受けるか、どう生かすかに苦心しているのですよぉ。
「ジャズ唄い」と言う表現もいいしねー。今度は「大正ロマンの着物趣味」と来たかぁ。
繭子があまり魅力的すぎると…「外伝・繭子〜港街の歌」なんてものまで書かなければいけなくなるじゃないかぁ。
「グイン・サーガ シリーズ」じゃないんだからぁ。
今夜はひと休み。また、明日「続編〜第7回」を書きますからねー。
もしも…無事に、面白く、刺激的に「霧笛が俺を呼んでいる」がエンディングへ辿り着いたら。
次回作・予告は…「口笛が聴こえる港街」、これね。

霧笛が俺を呼んでいる…第6回

コルトのジョーが教えてくれたキャバレーハーバーライトは風森町にある。この辺りは昔の遊郭がひしめいていた街区だと言う。大きな酒場が集って居るらしい。
ハーバーライトはそれなりに凝っていた。一度表階段を上がり、ドアを入ると階段状のエントランス、そして中央がダンスフロア。フロアの周囲と2階が客席になっている。
俺がボーイに案内されて入った時は半裸の踊り子がひとりで踊つていた。人気のある娘らしい。フルバンドが並んで演奏をしていた。
奥のカウンターにはなるほどジョーがいた。
ジョーは例のニタニタ笑いを薄く浮かべている。「よぉ、すぐに現れると思っていたぜ。やっかいな野郎だな」
「あんたとお友達になった方がいろいろと早道のような気がしてね」
「はん…。早道はいいが地獄への早道になるかも知れないんだぜ。ま、俺も実はお前ぇと話て見たかったからな。今夜はぶっそうな線は抜きにしてダチとして飲もうじゃないか」
ずんぐりした体型の、タキシードを着込んだ男が素早さを感じさせないさりげない身ごなしで近づいて来た。
「ジョーさん、初めてのお客様、ジョーさんのお知り合いならご紹介願いたいものですな」
ジョーが珍しく、笑いを収めて向き直った。どうやらこの男が嫌いらしい。
「あ。そうだな。久我…こつちはここの支配人でカーク高階。昔はならしたバンタム級のボクサーだった。
ごっついキドニーブローでひとり殺してる」
「ジョーさん。いや試合中の事故と言うやつで。それも大昔の話ですよ。久我さんとおっしゃいますか」
「ああ。幾度か来るかも知れない。宜しく」
「そうですか。ウエルカムドリンク。私から一杯目は差し上げましょう、何がよろしいでしょうか」
「断る…。とは言わないよ。ターキーのオン・ザロックをくれ」
「ありがとうございます。今後とも宜しく…」
カーク高階の視線ひとつでバーテンダーが来た。注文を受けると慇懃な仕草でグラスを出して来た。
大ぶりのグラスだが、相当の高級グラスだ。
カーク高階は静かに一礼するとバックヤードへと消えた。
「表情の割に危ない視線の男だな。冷たい…と言うのとも違うな」
「支配人でいるのが不思議なくらいぶっそうなヤツさ」ジョーは無表情で言う。
「この店は奥に随分と面白い仕掛けを持ってるみたいだな。本当の稼ぎはそっちか」
「久我。俺はお前ぇが嫌いじゃねぇ。ただ仕事ってやつがある。立場ってもんだ。必要のない事に好奇心を向けるとろくな事はないぜ。だが、お前ぇ、ただの二等航海士じゃねえな。なんだか俺と同じ匂いがする」
「よしてくれ。ただの船乗りさ。ただ南米辺りはこの手の世界が当たり前だ。なんとなく鼻が効くようになってるだけさ。それに、ジョー。俺が探してるものにはなんだって必要なんだがな」
「お前ぇがまだ良く解らねぇ。ただの二等航海士じゃ無い事はもう十分に解ったけどな」
演奏が止んだ。踊り子が砂糖菓子みたいな笑顔と、おおげさな媚びをあふれさせた仕草で引っ込んだ。
客席がざわつこうとして一瞬、2階席フロアから階段を降りながらギターを抱え、男が歌いながらゆっくり降りて来た。
バンドが戸惑いながらも演奏を合わせていく。
「♬町のみんなが 振り返る 甘い夜風も振り返る〜…♬♩」妙に甲高い声だ。俺はあっけにとられた。
コルトのジョーが「あの野郎…」と呟いてハンチングを目深に下ろしてしまった。
不思議な事にスポットライトが男を浮かび上がらせる。
男は藤村泰三だった。
店の奥から「野郎…」と云いながらこわもての男たちが5、6人でて来た。招かれざる闖入者なのだ。
藤村はフロア中央まで来て、なおも歌い続けている。
「…♬一緒に言いましょ アイ・ラブ・ユー グッドナイトとふた〜りにウインクしている夜の風〜」
出て来た男たちはすぐに藤村を取り押さえようとするかと思ったら、「野郎…」とが「ただじゃすまねぇぞ…」
云いながらも中腰のままで、麦酒瓶やこん棒を手にはしていても藤村を取り巻くだけで歌い終わるのを待っている。
歌が終わったらしい。演奏も終わった。多分どこからか侵入して来たのだろうがそれにしてもバンドがちゃんと合わせるのが俺には不思議だった。
男たちがいっせいに殴りかかった。藤村はあざやかに躱しながら全員を床に這わせてしまった、見た目以上に格闘技にたけている。恐ろしく身軽で、腕が立つ。
カーク高階と今度は少し本格的な雰囲気の男たちが3人出て来た。
「藤村さん。困りますねぇ。酔狂な真似もほどほどにしてくれませんか」
「俺も遊ばせてもらいたくてね。余興くらいやらないと失礼かと考えたのさ」
俺はさすがにあきれた眼で藤村を見た。
昼間のフィフティーズ・ファッションとはことなり上下は黒の革製のスーツだ。しかもそろいの黒のテンガロンハットまでかぶっている。どう言う性格なのだろう。
それに…腰の後ろには明らかにホルスターに差した小型のリヴォルバーを身につけている。
コルトのジョーが嬉しそうに前へ出ようとした。背広の前を開き気味にしている。
抜き撃ちが特異なヤツの仕草だ。

さーーて。今夜はこうなりました。
カメラバッグの女性が知っているらしい繭子の所有物の写真。歌声喫茶のママの正体。そしてやがて登場するであろうヒロイン。刑事浅部の思惑と行動。そしてなにより繭子はなぜ殺されたのか…。
入り乱れる人物と不可解な成り行き。
ハッハハハ…どうすんだろ。 書いてはいるんですけどねー。行き当たりばったりだから。昔の日活映画ファンならたまらない場面も創りたいし。あっ、次回には「丸太の上が木彫りの黒く塗った鷹(タカ)になってる」ってのがちらッと出ます。当然ダシール・ハメットのぉ…イッヒヒ。判る人には判る。
ではまた。

命をかけた山の畑疾走…。母親がね。

もう、ついでだから書いてしまう。僕は5歳くらいの時、左手首を切った。いまもなお、その時の傷を縫った痕跡は消えない。べつに5歳にして世の中の矛盾に悩んだわけでもない。5歳にして諸行無常と悟ったわけでもない。
当時熊本県の山奥の村に暮らしていた。台所スペースは土間で、井戸も広めの室内にあった。祖母が野菜を切っていた。
トイレに行くため。「これはとても切れる包丁だから悪戯しちゃ危ないよ」と言ってトイレへと向かった。
子供によけいな警告をするものではない。黙っていればなんと言う事もなかったかも知れない、
「とても切れる」と聞いたら何か切ってみたくなるのは、あなた、人情でしょうが。
包丁を右手に持ち、何か切ってもよい野菜とか、大根の切れ端はないかとさがして井戸端へと…。下駄をはいていたのです。
滑った。勢い良く前方へと転んだ。体を制御しようと言う神経で両手を前方に向けた、右手には包丁。
転んだいきおいもついていたからとんでもない速度で右手の先の包丁は左手首へと…。
鮮やかに切れた。昔の武芸者でも、こうは鮮やかに切れない。言うてる場合か。左手の手首は半ば下がり、血液は盛り上がって吹き出した。あまりにスパッと一気に切れたから痛みはなかった。
泣くのも忘れて母親の所へ左手を支えつつ「切ってしまったのぉ…」
さぁ、それから大騒ぎ。当時の村には医者などいない。もうね、日本昔話に出て来るような山間いの村。畑のある山ひとつこえて隣の町へいかないと医者も病院も皆無。左手首をきつく縛り、僕を背負い…と言うより背中にくくりつけ、母親は山を越えて走ったのです。
おぼろげに山の畑やら葡萄棚などの光景を覚えている。
これがあるから、母には頭が上がらない。「あの時、走るんじゃなかった」と言われるとねー。
幸い動脈まで1ミリそれて、太い静脈を切断しただけ、手首の腱も無事だった。
しかし、あのときもしも…母親が転んだり、どこか土手をころがったりしたら危なかった。
想い出してみれば、幼少期に病気で2回(このうち1回は葬式の用意までしたのです)。この怪我で1回。溺れかけて1回。中年の頃に心筋梗塞で1回。都合、5回も死にかけている。
何故か悪運強く生き延びて来た。これだけ幸運だと、後の事が悪くても「運命の女神様」に文句が言えない。
「あんたは、5回分の生き残りで“運”てものを使い果たしたのッ。女神ったってねー、そうサービスはできないわヨ」って言われてもしょうがないかなー。

痛いっ…超ド級の恥ずかしさ

若い頃、あれも23歳の時。職場で忙しい最中にトイレに行った。気が急いていた。シャーーッとオシッコを済ませた。仕事を気にしつつ急いでジッパーを上げた。
「ギャーーーーッ」
断末魔の悲鳴…を上げても可笑しくない。全然、おかしく無い。なんとジッパーにわが「愛する分身」の先端の皮膚が(できるだけ上品に気を使っている)くちゃくちゃに、つまりはジッパー巻き込まれているではないか。
これ…どうしたら…はずれるのだろう。外れるものだろうか。食い込んでジッパーのかたちに…なっちゃってるものなー…。トイレの中で茫然自失。貧血おこしそうになりましたよ。
しかし、どう考えても手段はひとつしかないのである。一体化したジッパーと「その皮膚部分」を離さなきゃいけないでしょうがー。このまんまトイレ出れるかぁ。
歯を食いしばった。気力を充実させ、ジッパーの上、ズボンの上の両端を掴んだ。不退転の決意でズボンのジッパーを強引に開いた。開きましたよ、そりゃ。再びの激しい痛み。
僕の「愛する部分の皮膚」は血だらけでくちゃくちゃにちぎれそうなヶ所もあり…。
幸い、「本体の肉質」には損傷は無かった。
ティッシュで幾重にも巻き、外れ易いからして…輪ゴムで止めて…病院へ。
会社で病院へと行く理由を告げる時も、病院で「なんでこうなったか」を説明する時も…
ひたすら恥ずかしかった。
思えばいろいろな事があるものです。

血だらけの男が…流血の大惨事

23歳の時。都電荒川線で職場に通っていた。若干「遅刻しそうかな…」と思って都電をおり、ふつうに路を急げば良いのに、とある看板らしい大きな建造物の下をくぐり少しでも距離を稼ごうとした。急いでいた、歩行に速度がついていた。その板状構造物の下をくぐり、頭を急角度であげた…何かに激しくひたいがぶつかった。
痛いッ…と思ったがそれほど怪我らしい感じもなかったので歩いた。
なにかがポタポタッとたれてシャツを濡らした。「ンー…」とシャツを見た。鮮血に染まっている。とたんに顔面にひたいからボタボターーッと血が溢れて来た。さっきぶつかったのはステンレスの看板の角。
ひたいはパックリと切れ、ギャーーーーッと言うほどの流血だったのだ。
ふと通りすがり家の窓ガラスにうつして見ると顔面は血で覆われ、シャツは真っ赤。窓ガラスの向こうでその家の住人が恐怖で後ずさりしている。そりゃそうだ。顔面を鮮血に染めた男が覗きこんでいるのだから。
行きつけの喫茶店に飛び込んだ。店中の客が驚いた。手短に話しておしぼりを借りた。喫茶店も災難であったろう。大量の血液を吸い込んだおしぼり…棄てるしかないではないか。ともかく、借りた(返されても嫌だつたろうけど)タオルで額をしばり会社へ行き。病院へと行った。あの当時プロレスで盛んに額から流血していたが、人間の身体は大切な顔面とか頭部は警告のために傷の程度に比べて大量に出血するものらしい。
ま、傷は以外に早く直りました。

ファドの旋律とちあきなおみ

ちあきなおみは優れた…とか、上手い…とか月並みな形容では表し切れない。戦後日本歌謡界が生んだ最大のシンガーと言っても、あながち大げさにはならないだろう。美空ひばりと言う巨星がいる。
彼女は優れたレコードと絶品と言えるステージも記録しているが、残念ながら時代と、ひばりを囲み込むスタッフに恵まれていなかった。
美空ひばりのジャズはなまじなジャズシンガー以上にジャズのフィーリングを表現している。「A列車で行こう」のスキャット部分など鳥肌が立つ。しかもヒバリ自身は英語をひと言も理解していない。
ジャズのレコードを何度か聞くだけで発音とフィーリング、リズムを身につけてしまうのである。
何が天才だと言って「耳」でしょうね。聞き取った音・言葉、感じた雰囲気、呼吸を完全に再現し得る声と喉、そして歌唱力。ひばりは「歌わなくても…」
言うようなばかばかしい楽曲もあきれるほど沢山歌っている。おもに東映映画がらみだったりする。
ひばりのプロデューサーでもあった母親の描いた「スター」は戦前の長谷川一夫や高田浩吉だった。だから、「歌による表現と、到達できはずのシンガーとしての高み…その栄光」など余り関心になかった。
世界のシンガーになろうとも、したいとも思わなかった。
どこまで本当か判らないが日本公演の前夜、来二つしたハリー・ベラフォンテがひばりの生の歌声で日本の曲を聞いて自分が歌う予定の日本の楽曲をほとんど止めてしまったとも伝えられている。
類・アームストロングはひばりのレコードを聞いて「これだけの声だ。エラフィッツ・ジェラルドみたいに太った女性シンガーだろう」と言ったらしい。
さて、ちあきなおみ…シャンソン・ジャズ・フォド・歌謡曲…とジャンルを問わずいずれも絶妙の表現で「ちあきなおみの歌」にしてしまう「声の魔術師」だが、ファドの歌い手・月田秀子を聴いた時には「やはりちあきなおみは歌謡曲の人だ」と思った。
けれどそれはちあきなおみの価値を下げるものではない。
ちあきなおみ…いまは遺されたCDでしか聞けない「生きている伝説のシンガー」になっている。
桜子さんのブログにあった友川かづきの楽曲「夜へ急ぐひと」をちあきなおみが紅白歌合戦で鬼気迫る迫力で「演じ、歌いきった」その時、明らかに通常の予定調和的な紅白歌合戦はぶっ飛んでしまった。
べてらんで冷静な山川静夫アナウンサーが驚きとおそらくは抗議の意をこめて「気持ちの悪い歌ですねー…」と自身でもフォローできないコメントを口走ったのも無理はなかった。
他の出演歌手も「どーすんだよ。これだけ演られた後、どう歌えばいいんだよ」と思ったに違いない。
ちあきなおみ…現在ではのこされたCDで聴くしかない「生きている伝説のシンガー」ですね。
プロフィール

テディ・グレイ

Author:テディ・グレイ
テディです。団塊の世代ど真ん中と言うヤツですね。つまりはジジイなんです。好き勝手な、発作的な、唐突な話題を展開するとおもいます。面白がって頂ければ幸いです。オブジェ制作・写真撮影・雑文界がなどが趣味的仕事です。冗談の好きですが、冗談は人生だけにしとけ…と言われる、そんな人格です。
成熟した大人の部分はほとんどありません。ガキのまんま、年だけ食ってると言う始末の悪いタイプです。
外面は良いのです。と、言って特別ワルい性格でもありません。
ともかく、よろしくね。

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